のぼるおんなは今日もめんどう。

2017年から登山をはじめた、こじらせ会社員女性が、山行で余計にこじらせた思考を記録します。

【東北・安達太良山】福島百名山の旅 DAY1-ほんとの空のもとで

とにかく山に登りたかった。

6月は、尾瀬沼ハイキングには行ったものの、山には登っていなかった。なんといっても梅雨ですし、わたしにはまったく天気が読めない。なんとなくフラストレーションを感じる日々。今週末はどうしても登りたい…しかし、てんきとくらすを見ていると、関東・甲信越はまた天気が悪そう。

tenkura.n-kishou.co.jp

いつもならここであきらめるところですが、なんといってもフラストレーション。あらゆる天気予報サイトをハシゴし、天気の持ちそうなエリアを探す。そして、決めたのです。

週末は、福島の百名山に登る!

ソロ山行では今まででいちばん距離が遠い。しかし決めてからは早いです。高速バスと宿を手配し、昼休みに山と高原地図を買ってきて山行計画。路線バスの時刻表をiPhoneにダウンロードし、日程表を組みあげる。さあ、あとは行くだけ…!そんな弾丸ひとり山行旅をつれづれに記録したいと思います。

 

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金曜の夜、定時ダッシュで帰宅。最低限の家事とパッキング、そしてお風呂を済ませて東京駅へ向かう。24:30発、郡山駅行の夜行バスに乗って出発です。

夜行バスはケチって4列シート。「ゆったりタイプ」と書かれていたので一縷の望みは捨てずに臨みましたが、されど4列。狭いです。となりの席が空いていたので荷物を置かせてもらえたのは不幸中の幸いか。浅い眠りでしたが、到着アナウンスで目覚めました。朝5時、郡山駅に到着。

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時間があったのでブラブラと郡山周辺を歩いてみると、結構ダーティな繁華街でした。学生時代に住んでいた北九州小倉に似ているような…

コインロッカーに荷物を預けたり5年ぶりの朝マックをしたりして時間をつぶし、在来線で二本松駅へ向かいます。

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郡山駅から約20分。ここからバスに乗って奥岳登山口へ。この旅の一座目、安達太良山へ向かいます。

なんとなくずっと気になっていた安達太良山。山を始めたころ「アダチタイラ」と読んで山友達に正しい読みを教えてもらいました。「アダタラ」って読み、めちゃくちゃかっこいい。そんなことが気になっていたので、今回の旅を決めたのもこの山がきっかけです。

登るにあたって知ったのですが、高村光太郎の『智恵子抄』に登場するのですね。

智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。

東京に嫌気が差し始めているわたしにとって、かなりタイムリーな投げかけです智恵子さん。二本松にもこんな銅像が。

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いざ見に行きます。ほんとの空を。

 

≪工程≫

奥岳登山口→あだたら山ロープウェイ→安達太良山頂→峰の辻→くろがね小屋→奥岳登山口

恐らく最もスタンダードなルートかと思います。コースタイムも全部で5時間程度と短めなので、高速バス疲れを考慮して1日目にしました。

奥岳登山口から、ロープウェイに乗ります。これで400メートル近く標高が稼げます。ロープウェイ乗り場から風景の広大さに感動しているわたし。

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乗り場の中はなんとなく近未来感。

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5分ほどで山頂駅に到着します。ここで準備して登山開始。トイレがキレイでうれしい。

登山を開始してすぐ、きれいな花が連続して登場。これはうれしい!あとから知りましたが、「花の百名山」にも選ばれているのですね。

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急登もなく、登りやすい道です。整備もされています。

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とにかく木々や花が美しく、すでにテンションメーターが壊れています。

途中、薬師岳というところに寄ります。なぜなら…

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ほんとの空があるから。ただしガス。

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しかし、よい展望。木々が茂っています。

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どんどん進みます。草花が本当にきれいだよお。

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なんだか道がガレてきました。

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このあたりで気付きます。わたし、ガレ場が好き…。荒々しい道がかっこよくて好きみたいです。

山頂が近づくと、あの稜線が見えてきました。これこれ!これが見たかった!2時間ほど登るだけでこの景色とは。

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わくわくが止まりません。すべりやすい道を登り、山頂を目指します。

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そして山頂に到着。ででーん。

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この写真の後ろにすこし見える岩場を登ると、祠つきの本当の(?)山頂につきます。

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ガスっていますが、鉄山に向かう見事な稜線が見えます。

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大迫力の絶景に感動。すべての言葉を失う。もちろん、東京からわざわざここまで来たというのもスパイスにはなっていますが、なんというかもう…来てよかった。心から。

予定はしていなかったけど、どうしてもこの稜線を歩きたくなった。ビビりの初心者なので、予定外のルート変更にものすごく躊躇する。いやでも、歩きたい…満を持して山と高原地図を取り出し、この稜線を歩き、鉄山へ向かうことに。

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あー!!!うれしいー!!!!!幸せの絶頂。ですがガスで先が見えない。

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赤い土がかっこいい。しかし、先が見えない…

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このあたりでどうにも怖くなってしまい、引き返しました。あはは…。引き返す途中、すれ違ったおじさんに「あんた足なげえね!」と言われてご機嫌です。福島いいとこだなあ。

 

気を取り直して、予定通りのルートでくろがね小屋に向かうことに。

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休憩は小屋前の予定。もう腹ペコなのです。

ここで、あるおじいさんとたまたま話し始め、なんとなくそのままいっしょにくろがね小屋まで向かうことに。

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実はさっき稜線に向かう写真にも登場しています。三脚を立てて稜線の写真を撮っていました。

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「あんた、さっき鉄山の方に向かってたべ?なんでここにいるの?」と声をかけてくれました。ガスって先が見えないのが怖くなって引き返したと言ったら、「そりゃ初めてだもんな、怖いよな、次の楽しみだな」と。なんだか話しているととても落ち着く人で、くろがね小屋までそれはそれは楽しくお話しました。

安達太良山は、なんと温泉が湧いているのです。歩いていると硫黄の香りがすごい。あそこが温泉だべ、とおじいさんが教えてくれた方向の景色はとんでもなくかっこいい。

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安達太良山はかわいらしいお花の道を抜けると、荒々しく、雄々しい景色が広がっています。なんというかギャップ萌え…

くろがね小屋が見えます。

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通年営業で、温泉まで入れるので人気のようです。実は今回ここに泊まりたかったのですが予約がいっぱいで断念しました。

くろがね小屋に着き、食事をとります。おじいさんはおにぎり、わたしはペペロンチーノです。

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「パスタなんか作るんだべ?!好きなんだなあ」とおじいさん。さっき、話していると落ち着くとか言いましたが、福島なまりが強くて、言っていることの半分くらいしかわかりません。

おじいさんは山登り歴20年。食べながら福島の山のことをいろいろ教えてくれました。安達太良山は紅葉も最高だ、とか、一切経山は日帰りで行けるのに名山だ、とか。翌日行く山の話をしたら、おすすめのルートを教えてくれました。実際、おじいさんの話を信じてルート変更しました。正解でした。

くろがね小屋を発つときも、みんながスルーしてしまうとっておきの下山ルートがあるからそこから下りないかと提案してくれました。もちろん乗っかります。

下山中に振り返ると見えるくろがね小屋。黒くてかっこいいです。もうすぐ建て替えをするらしい。おじいさんもこの風貌が好きだって。

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おじいさんに、「あんたいつもひとりなの?」と聞かれまして、まあ、はい、そうですねえ、半々くらいですかねえ、というと、「おれもいっつもひとり。こんな年だから登山グループに入った方がいいってわかるんだけどねえ…群れるのが嫌いなんだよ…」と。そしてだらだらと続く下山道の途中、「この道はいっつもひとりだと長くてしんどいけど、今日は話しながらだからあっという間だな」とおじいさん。なんだかこの人に妙に親しみを感じている理由がわかった気がした。

さて、おじいさんのいう「とっておき」に到着です。あだたら渓谷自然遊歩道。

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なんと安達太良山には沢もあり、それが堪能できる遊歩道!先ほどまでの雄々しい風景とは打って変わって、澄んだ雰囲気が味わえます。

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滝もあります。おじいさんはこの滝を見せたかったようです。

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何度も何度もおじいさんは「安達太良山、いいとこだべ?いいとこだろ?」と言っていました。「いやなことがあっても、ここにくると、どうでもよくなるんだ」と笑っていました。本当に好きなんだ、この山が。

さて、登山口に戻ってきました。バスで帰るというと、なんと宿をとった郡山駅まで車で送ってくれるという…!コンマ5秒でお言葉に甘えました。さらになんと、息子さんからもらった岳温泉無料券が2人まで使えるので行くか?と。コンマ2秒で首を縦に振りました。

車の中で、明日行く山の登山口まで送ってやろうか?ともご提案いただきましたが、それはさすがに悪いな…と思い丁重にお断り。翌日、やっぱり送ってもらえばよかったと後悔することは、この時にはまだ知りません。

温泉に入ったあと、楽しく話をしながら郡山駅へ。ご家族のこと、震災のこと、山のこと、福島のこと。「東京に戻ったら、なんでこんなところに住んでんだ?って悲しくなるべ」と。昔東京に住んでいたらしい。おじいさんの、福島への愛をたくさん感じていたら、最後の最後に岩手県出身だと判明。えっと……住めば都ですよね。

電話番号を交換してさよなら。また福島の山に登るときにはいっしょに登ろうと。ホテルについて御礼の連絡をし、ひとり福島の地酒で打ち上げをするためにわたしは街に繰り出したのでした。

そして酔いが手伝い、寝る前にひとり泣いてしまいました。感動で(わたしそういうところあるんです)。なにに感動していたかはわかりません。

youtu.be

この曲を聴いて泣いていました。正直に言うと、今も聴きながら泣いています。大好きな曲ですが、こんなにハマるタイミングは今までなかった。

言葉より 触れ合い求めて 突き進む君へ

ひとりが好きなのに、群れられないのに、触れ合いにこんなにも喜んで感動してしまう。ねえ、これからも、突き進んでいいですか。間違っていないですか。

寝る前に、おじいさんから御礼の返信がきました。「明日も無理せず楽しんで。またお会いできると嬉しいです」。

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安達太良山の上の空がほんとの空。いま、このブログを書いている神奈川から見える空の方がよっぽど青いのに(だってめちゃくちゃガスってたし)、まだ心はあの空にあります。

 

さあ、DAY2は・・・磐梯山

はじめての続きもの記事、お楽しみに・・・