【南アルプス・北岳~間ノ岳/前編】30歳の誕生日にあこがれの北岳へ-おとなになるってなんだろうの旅がはじまる
おとなになるとは。
昔なにかで「だれかに叱られたいと思うこと」だと聞いたことがある。ドラえもんも「おとなはかわいそうだ、思いきり甘えることもだれかに叱られることもない」といった旨をおっしゃっていた。
ついに、30歳になった。しかし未だ心から、だれにも叱られたくない。そして、思いきり甘えたい。おとなとは、なんだろう。わたしは何も変わっていないのに、みんな「おとならしく」いるような気がして焦る。「おとならしく」いられない自分を恥ずかしくも感じるし、「おとならしく」いられない自分が誰かに笑われているのではないかと思う。「おとならしい」人への憧憬と羨望と嫉妬で、布団の中で狂いそうになる夜もある。
30歳はまだまだこれからだよ、とも言われる。だけど、その語感におちおちと安心してはいられないような気もする。でも、どうしていいかはわからない。ただただ漠然とこわい。何に恐れているかは、わからない。
ただひとつ、決めていた。30歳になる日には、ひとりで山にいよう、と。そしてその山は絶対に北岳だと。
なぜか登山を始めてからずっと、北岳にあこがれていた。日本で2番目に高い山にも関わらずその低い知名度や山容の渋さなど、惹かれて仕方がなかった。ドラゴンボールで好きなキャラは悟空じゃなくてヤジロベー、スラムダンクで好きなキャラは花道でも三井でもなく水戸洋平。わたしはそういうおんなである。※ヤジロベーや水戸洋平よりは、北岳は華やかだと思いますが…すみません
というわけで、2018年8月1ー3日。二泊三日で北岳から間ノ岳に行ってきました。
会社から夏休みをいただき、ド平日に登山。カレンダー通りの出勤のわたしにとって、はじめてのことです。正直前日は浮かれすぎてまったく仕事になりませんでした。
≪行程≫
今回は、初の二泊三日!初のソロテン泊!!初の3000m超え!!!
1日目:広河原~白根御池小屋
2日目:白根御池小屋~草スベリ~北岳肩の小屋~北岳山頂~北岳山荘(幕営・デポ)~間ノ岳~北岳山荘
二泊三日なので北岳~間ノ岳~農鳥岳の「白峰三山」縦走もギリギリまで検討しましたが、わたしの体力では厳しいだろうと判断し、日程だけは割とゆったりとした登山になりました(ただしわたしの体力は案の定ゆったりしていなかった)。
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初日。いつも出勤するより早い小田急線に乗り、新宿へ向かう。バスタ新宿を7:05に出る、甲府行の高速バスに乗るためだ。早い時間とはいえ、小田急線にはサラリーマンがちらほらと。なにしろ水曜日だ。ひとことでいうと優越感。
新宿に着き、順調にバスに乗る。心が騒ぎまくっている。愛読させていただいている「山と食欲と私」というマンガで、主人公の鮎美ちゃんが平日八ヶ岳登山に向かう新幹線で喜んでいるシーンがあるのですが、思い出して全力で共感していた。
さて、甲府についた。天気は・・・
ええやないか。ここからまたバスに乗って、登山口のある広河原までさらに2時間、山道をゆきます。バスには運転手さんとは別にガイドさんがいて、車窓から見える南アルプスの風景を解説してくれました!これがもう楽しくて楽しくて、あっという間の2時間でした。最後には乗客全員で拍手。ありがとうございました。
そして広河原につき、準備をしていよいよ登山スタートです。
それはそれは北岳にあこがれていましたので、いろんなブログを見漁り、この吊り橋もよく写真で見ていました。「ついに・・・きたか・・・」気持ちが高ぶりすぎて、スキップしてしまいました。荷物15kg。どすどす。
想像通り、南アルプスの天然水や、
おはな、
そして・・・樹林帯。
すみません、白根御池小屋に着くまでの写真がほとんどないです。とにかく無風の樹林帯で、そしてすんごい急登。汗が際限なく出る。もうすでに北岳まで辿りつける自信がなくなってしまっていました。荷物15kg。どすどす・・・
それでもだいたいコースタイム通りに白根御池小屋に到着。15:30頃でした。
二泊三日の山行を終えたいま思うのは、本気で白根御池小屋に泊まる計画にしておいてよかった、ということです。ここまでの急登も、そしてここからの急登も、初心者のわたしにはこたえた・・・これを初日だけでテント背負ってこなす自信は、いまのところ一切ないです。そして白根御池小屋は、とてもきれいな小屋でした。特にトイレは、今まで山で使ったものの中でいちばんきれいでした。感動です。ありがたい。中もすこしのぞかせていただきましたが、夢のような雑誌とマンガの数・・・絶対にいつか泊まりたい!!
愛用しているかっこいいゴーストスカイくんを張り、
とりあえず名物のソフトクリーム(桃味)を。果肉うんまっ!!!全身に染み渡る。
そして、今日の晩御飯はたらこパスタとサッポロ黒ラベルです。
雨も降りそうだったので(実際すこし降った)、食べたら早々にテントに入って就寝体制に。今回は文庫本なんて持ってきちゃったんだよねー。これもはじめてのことでした。
中二病なので、「誕生日に読む本だからなにか意味を持たせないと…」と考えてしまうので。今回はまだまだ子供でいたい・青春をしたい、みたいな気持ちをもっと燃え上がらせたく、この本を選びました。テントでワイン飲みながら読んだよ(恥ずかしい)。
起床は4時半ごろ。テントから出ると、月とこれから登るアイツが見えました。
朝ごはんは安定のちゃんぽん麺です。
食べ終わり、出発の準備をする前に空を見上げると。
雲ひとつない空!そして、白根御池には
きれいにアイツが移っています。
このあたりで気付きます。
「あれ!?わたし、いま30歳じゃん!!」
2日目が誕生日でした。あんなに30歳になることに対してセンチメンタルだったくせに、全然忘れていました。思えば、誕生日を迎える瞬間は、いつも友人が祝ってくれていたような気がします。今年は山時間なので寝ていました。幸せなことですね。今までの誕生日を思い出してうれしくなりました。
テントを片付けていると、シニアのグループが「おねえさん、ひとりでテントなんてすごいね!北岳で会おうね!」と声を掛けてくださり、発っていきました。
北岳で会おう、か。現実感がなく、思わず笑ってしまいます。
さあ、あこがれの北岳へ。いざ。おとなへ。
(つづく)