【東北・磐梯山】福島百名山の旅 DAY2-迫力の火山で出会った、やさしいひとと忘れられない景色
福島にひとり旅をしてから、もう1週間経った。先週の今頃は、郡山のホテルで早くも安達太良山を懐古しながらチューハイを飲んでいた。時間が経つのは早い。
昨日、関東は梅雨明けが発表された。去年より22日も早いらしい。今日も暑かった。夏がきたと、確信できる。夏山のシーズンが始まった。
この夏に行きたい山が多すぎて、でも身体はひとつだから限界があって、そんなことにやきもきしてしまう。思えば、登山を始めて今月でちょうど1年。この1年で生活がガラリと変わってしまった。土曜日には朝から王様のブランチを見て、東京のおしゃれなレストランを熱心にメモしていたものだが、今日久しぶりに洗濯物を畳みながら見ていても、あまり心動かされなかった。麻布の高級ハンバーガーを食べるならなにか登山のギアを買う。
そんな風に強く思ってしまうのも、磐梯山の経験が焼きついているからかも知れない。福島遠征2日目です。一生忘れられない、特別な日になりました。
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朝8時半、ホテルをチェックアウトして、郡山駅発の快速に乗り猪苗代駅へ。大体40分くらいで到着しました。電車の中でこれを食べます。
前日の夜、ひとり居酒屋で福島地鶏のからあげと米沢のフルーツトマトを食べたものの(めちゃくちゃおいしかった)、なんとなくご当地感のある食事に飢えていたので…。 味は想像通りの炊き込みごはんでした。
猪苗代駅に到着。
到着し、駅舎を出るといきなりドーン。
今から登る磐梯山です。こちらから見える景色はいわゆる「表磐梯」で、わたしは猪苗代駅からバスに乗り裏側へまわり、「裏磐梯」から登ります。表磐梯は富士ライクな美しい形をしていて、圧巻な佇まい。天気も良く、こんなにきれいに見えるとは思っていなかったので気持ちが高まります。
さて、バスに乗って1時間ほどで裏磐梯に着きます。バスを降りようとしたら、登山ウェアを着ているわたしを見た運転手さんが「裏磐梯から登山するなら、ひとつ先のバス停がいいべ」と声を掛けてくれました。福島の人はいい人すぎる説、強固になってきました。
≪行程≫
猪苗代駅→(バス)裏磐梯高原駅→裏磐梯スキー場登山口→噴気口分岐→弘法清水→磐梯山頂→猪苗代スキー場
だいたいトータルで7時間くらいでしょうか。ハードでした。
いよいよ磐梯山へゴー!…と思ったら、30分くらいは登山口への砂利道歩き。何台か車に追い抜かれた。ああ、昨日のおじいさんに送ってもらうべきだった…。
天気が良い分、炎天下で汗がじゃーじゃー流れます。しばらく歩くとお目当てが見えてくる…!
ここらへん、冬はスキー場なので、いまわたしはゲレンデを歩いているのですね。リフト動いてくれ。
このあたりで、軽装の同世代男性二人組に出会います。挨拶をしたら、どこからきたの?と話しかけてくださいました。聞けば、学生時代の同級生で、それぞれ茨城、北海道から弾丸福島旅行に来ているのだとか。早朝からすぐ近くの五色沼を観光して、いまから銅沼(あかぬま)を見て帰るらしい。銅沼はわたしも通る予定だったので、なんとなく一緒に向かうことになりました。ふたりでノープランの旅をたくさんしてきたので、おたがいなにも気を遣わなくていいからラクなんだよね、と言っていた。素敵だなあ。
正直、このゲレンデ歩きは二人組と一緒じゃなければかなりしんどかったと思う。お二人もここまで暑いとは思っていなかったそうで、水も持っていなかった。塩キャンディをあげました。
ゲレンデを登り切ったら、磐梯山が目の前に。
表磐梯とは違い、裏磐梯は火山噴火のあとがありありとわかる荒々しさ。このかっこいい風貌が見たくて、わざわざから裏から登ると決めたのです。
ここから少し歩くと、銅沼に到着です。
火山の影響で銅の成分が沼に混ざっているそうで、沼の多色グラデーションと緑とのコントラストがなんとも言えずに美しい。磐梯山もしっかりと映り、三人ではしゃいでしまいました。
二人組のうち一人は立派なカメラを持っていて、今度地元の秋田で写真展をやるんだとおっしゃっていました。場所も教えてもらったので、行きたいな、なんて。その時は秋田駒ヶ岳かな。銅沼の写真もあればうれしいな。
お二人とはここでさようなら。お互いに、お気をつけてと声を掛けて。
さて、わたしの本番はここからです。いよいよ磐梯山頂へ向かいます。
実は初めて、山と高原地図の破線ルートを選びました。いわゆる推奨ルートではない上級者向けのルートです。ビビリなので推奨ルートの予定でしたが、前日に安達太良山で会ったおじいさんに「絶対にこっちのルートの方が展望がいい、俺でも登れるから大丈夫だ」と言われ、思い切って挑戦しました。
いきなり細道で、緑が茂ります。
頭の中でWILD RUSHがぐるぐると流れます。こんなはずでは…コミックソングやめてよ…。ジャングル風の登山道を抜けると、眼前にドーンと現れます。
かっこいい!!かっこよすぎるこの風貌!!!
そしてしばらく歩くと、ガレ場の登山道にあたります。
昨日の引き続き、ガレ場萌えが止まりません。
ああ、ガレ場。ガレ場と火山のイケメンっぷりよ。恍惚の中、なにかに目覚めそうになりました。このルートを教えてくれたおじいさんに感謝。わざわざガレ場でコロッケパンを食べて長めの休憩をとったあと、再びWILD RUSHに突入。
なんだこの鉄の手すり…。ここからの急登は本当につらく、しかも風が通らず蒸し蒸しの状態だったのでものすごくバテてしまいました。このルートを教えてくれたおじいさんを一瞬恨みました。
しかし!急登を抜けると…
すべての語彙を失くすタイムに突入。その迫力に、偉大さに、強さに、泣きました。かっこいいんです。これ以上余計なことは言いません。
すれ違った男性に、「磐梯山はここがいちばんいいんだよねえ」と教えていただきました。いまわたしは、いちばんいいところにいるんだ、と思うと、大きく息を吸い込むほかありません。いまこの瞬間を身体中で感じたい。
そしてここで、水場登場っ!
冷たくておいしい。マジで。WILD RUSHで削ぎ落とされた体力が急速に戻っていくようです。
さらにここから少し歩くと、「岡部小屋」と「弘法清水小屋」というふたつの小屋に出くわします。休憩専用の小屋で、どちらもご夫婦で切り盛りされています。弘法清水小屋でバッジを購入し、いざ山頂へ。
途中、山頂から下りてくるご夫婦とすれ違うときに「今日は山頂からぜーんぶ見えるよ!」という最高の振りをもらい、不思議と足早に。
そして小屋から20分ほどで山頂に到着しました。
まさに、まさに、全部見えます。
標高1,816m、磐梯山、登頂!
登山を始めて30回目の山行でした。キリがいいね!
三角点ふみふみ。
いつまでも見ていられる景色。
名残惜しくも、下山を開始。小屋まで戻ってカップラーメンを食べました。
岡部小屋の中で、足が痛いと言っている男性がいるのが見えました。のぞいてみると、さっき山頂の展望がいいよと教えてくれたご夫婦の旦那さん。奥さんが足をさすっていました。小屋の人たちが「もう小屋を閉めてみんなで降りるから、荷物持ってあげるよ」と言っています。なぜか思わず「わたしもザック軽いんで、何か持ちましょうか」と声を掛けていました。
すると岡部小屋のご主人が「いらねえ!いいから小屋に入ってきな」と。めちゃくちゃに酔っぱらっています。そこからなぜか話し込みます。尾根歩きなんて酒飲んでやるもんだ、本当の山登りは岩登りのことなんだ。と。かっこいい。(まともに聞き取れたのはこれくらいのもの。訛りが強かった、、、)
足の痛い旦那さんは、どうやら足をつってしまったようでした。治らないので無理に動き出そうとすると、弘法清水小屋の奥さんがビニール袋を持ってきて「これを口に当てて、深呼吸して!」と。言うとおりにすると、驚くほど足のつりが治ったそう!きつい登山だと息が上がって、酸素ばかり吸うので二酸化炭素の吐き出しがうまく行われずにこうなることがよくあるんだって。これは覚えておこうと思いました。
あと、奥さんいわく、塩分が足りてないんじゃないかと。塩キャンディをあげました。本日、塩キャンディ配りすぎ。ビッキーズか。
その後、弘法清水小屋のご夫婦、岡部小屋のご夫婦、岡部小屋のアルバイトの男性、そして足の治ったご夫婦とみんなで下山することに。稀有な経験に胸がいっぱいです。
下山中、ヤマツツジを見つけました。
登るときには疲れていて見つけられなかった。ほかにも弘法清水小屋のご主人に咲いている花の名前をたくさん教わりました。すごく贅沢なことですね。
歩きながら、タクシーで猪苗代駅まで戻り、そこから郡山駅へ向かい新幹線で帰る予定だというと、足の治ったご夫婦が車で郡山駅まで送ってくれるという。塩キャンディのお礼だよ、と。二日連続こんなことがあるのか…コンマ2秒でお言葉に甘えさせてもらった。
下山中、ご夫婦はこの夏、富士山に挑戦する予定なのだと言っていた。ハードな磐梯山で練習だそう。とても仲の良いご夫婦だった。
帰りは表磐梯の方へ出た。猪苗代湖がきれいに見える。
こちらもスキー場になっていて、ゲレンデをずっと下っていく。まあこれもヒザにきます。リフト動いてくれマジで。
駐車場に到着し、車に乗せてもらい出発。お酒が好きだと言ったら、福島の地酒を買ったらいい、と、道の駅に寄ってくださった。道の駅から磐梯山が見えた。
「わたしたち、今日あの上にいたんだね…」途方もない話だ。わたしは今日中に東京に帰るのだ。数々の非現実に思わず笑う。
帰りの車でたくさんお話したので、郡山駅まであっという間だった。ご夫婦が、今日山小屋の人に助けてもらった恩はほかの人で返そうね、と言った。わたしもこの恩を返そうと、連鎖させることで繋がっていられる、となんとなくロマンチックなことを考えた。
車から降り、お礼を言うと、また秋に会えたらいいねと言ってくださった。不思議と会える気がするのはなぜだろう。
新幹線に乗り、東京に戻る。新幹線で米沢牛の牛めし駅弁with黒ラベルを一瞬で完食。福島百名山の旅2DAYS、無事に終了です。
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磐梯山から下りる前、酔っぱらっている岡部小屋のご主人に「あんたみたいな笑顔で登ってくるひと、めずらしいよ。楽しいんだねえ」と言われた。そのとき、昔は登山が趣味だったうちの母がかつて、立山の山頂で神主さんに「あなたの笑顔はなんて素敵なんだ」と言われた、という話を思い出した。
素晴らしい景色に出会えたこと、はじめてのことをたくさん経験したこと、そしてなにより、たくさんの人にやさしくしてもらったこと。すべてが自分の目から・肌から染み渡っていって、わたしの真ん中で感動が弾けたこと。どれも新鮮な体験なのに、それに出会ったわたしの笑顔は、きっと昔の母に似ていること。
どんなに新鮮な体験をしても、母から受け継がれた、ありのままの自分であり続けるのだ。そしてその事実をめいっぱい肯定してやる。福島の人のやさしさは、そんな風に思わせてくれました。
福島で出会ったすべてのことを忘れない。山も、街も、人も。本当にいい旅でした。絶対にまたきます。そしてまたみんなに会いたい!福島が、大好きになりました。
さて…本格的に、東京を出て移住を検討しようと思いはじめています。福島も候補のひとつということで。いつになるかわからんけども。この夏は、遠征登山で移住先を大検討するぞ!