【丹沢主稜縦走】初の単独宿泊、すべて背負って進むしかない。
2017年12月2~3日で、丹沢主稜縦走に行ってきました。単独で初の泊まり登山です。
突然ですが、私はGRAPEVINEというバンドが大好きです。
30代後半の男性にそう言うと、リアクションは「なつかし~!」の一択です。
1997年デビュー、去年は20周年イヤーでした。
丹沢縦走出発前日の12月1日夜、同じくバイン好きの友人と(注:私の年代でバイン好きの友人はかなりレア、本当に貴重な友人です)GRAPEVINE20周年ツアー最終日@東京国際フォーラムに参戦してきました。
ただただ最高のライブでした。20周年とて、ベスト盤的セットリストにすることもなく、新アルバム中心の選曲。攻めの姿勢と円熟したパフォーマンスにしびれました。ボーカルの田中さんの色気、すんごいんですよ。田中さんに遊ばれたい。
その上、古いファンも喜ぶ昔の曲もちらほらやってくれました。
ものっっっすごいよかったのが、この曲です。
田中さんの書く詞は、どの曲もひねくれていて、でもすごく本質的でもあって。いつ聴いても少し傷つけられて。GRAPEVINE最大の魅力のひとつは、田中さんの詞にあります。
Our Songより。
期待をして 身を乗りだして すれちがいまくって
昨日のツケ忘れたフリして 明日へ向かうって
言い訳してるだけ
「明日」という言葉に内包される、ひたすらに前向きな温度。それですべて許されるようなひたむきさ。確かに「明日」というのはマジックワードです。「次」とか「未来」も同じような温度を持っていると思います。
でも、そのマジックワードに隠れた昨日は、過去は、どうだったのか。前に進むことで、全部なかったことにしようとしていないか。
ああ…。一回死んでもいいですか…。
話は戻りまして丹沢主稜。1週間前からコース決めや持ち物準備に大奮闘。その時間もまた楽しかったです。
【コース】
どうしても大倉ではなくヤビツ峠からの表尾根を歩きたくて、最もロングなコースを選んでしまいました。きつかった~!
(しかも出発前日、バインのライブのあと終電まで飲んでたっていう)
■1日目
8:00ヤビツ峠⇒9:50三ノ塔⇒10:22烏尾山山頂⇒10:47行者ヶ岳山頂⇒11:37新大日⇒12:20塔ノ岳山頂(休憩25分)⇒13:30竜ヶ馬場⇒14:05丹沢山山頂⇒15:00棚沢の頭⇒15:55蛭ヶ岳山頂、蛭ヶ岳山荘泊
■2日目
7:00蛭ヶ岳山荘⇒8:20臼ヶ岳山頂⇒9:10金山谷乗越⇒10:25檜洞丸山頂(休憩45分)⇒12:15展望園地⇒12:50ゴーラ沢出合い⇒13:40西丹沢ビジターセンター
約35km。ソーハード。週末だけでこんな大縦走ができるのも、都心に近い丹沢ゆえかと思います。1日目は大体コースタイム通り、2日目はすこし巻けました。
歩き始めると…展望のいい表尾根が歩きたくてハードコースにしたのに、
ハイパーガス。
なんだこれ…。しかも塔ノ岳までは人が多く、鎖場付近では渋滞も発生。
しかしガスでも表尾根の稜線はやっぱり最高。
塔ノ岳山頂に着いてもガスが晴れることはなく、ここで引き返して日帰りにしようかと検討したほどでした。山頂の寒いこと寒いこと。
しかし荒天なわけでもないので、予定通り丹沢山~蛭ヶ岳を目指すことに。これが正解で、ここから先は人が一気に減り、快適登山を楽しめます。
霧氷も出現。誰もいないから、写真撮りまくってキャッキャ騒ぐ。(ガスの中だけど)
桜のよう。
躍動。
丹沢山から蛭ヶ岳へ向かう静かな山道を歩いているときも、GRAPEVINEのOur Songが頭から離れませんでした。
立ち止まったんだ 人並みの中
ふいに聴こえたメロディー
君を失くすくらいなら
死んだほうがマシ
山中特有のポエティックモードに拍車をかけるバインちゃん。この歌詞は、「君」をすごく欲しているのではなく、孤独を恐れているんだと思います、私は。意外とこの「君」には代わりにがいるものだと思います。ひとりはいつだって不安です。
丹沢山~蛭ヶ岳は、登り返しがとにかくきつい。展望があればなんとか頑張れますが、相変わらずガス。しかも寒すぎて、ナルゲンに入れていた水がシャリシャリに凍ってしまいました。道もドロドロ。ゲイター買うことを決意。
15:55、なんとか蛭ヶ岳山荘に到着。着いたときには涙出そうでした。
素泊まりでしたので、食事は自炊室にて。
ひとりビールを飲んでいたら知らないおじさんがチーズをくれました。ひとりラーメンを作り出したら知らないおねえさんがワインとチーズをくれました。そんなにチーズ食べたそうな顔してたかな?
こういう山小屋の出会いは本当に楽しいですね。いろんな人とお話できてうれしかったです。
蛭ヶ岳山荘名物の夜景も、この日はガスで全然見えず。消灯の20時前に意識を失っていました。ちなみにこの日は布団1枚に2人でしたが、なんと私はソロハイカーなので1人で1枚使っていいよとのこと!こんなラッキーは、この先もきっとないでしょう。おかげでゆっくり寝られました。
翌朝、5時起床。どこからか「夜景きれいに見えるよ」という声が聞こえて急いで外に行きます。
あんまり見えませんが、生で見るとすごかったんです。これが、東京・・・すごいところにきたもんだ。
昨日のガスは、すべて雲海に変わっていました。目の前で雲海を見るのは初めてで…もう涙腺がこわれかけ。
そして朝食とだいたいの身支度を済ませ、いよいよご来光待ち。寒い中待った甲斐があり…
驚くほど自然に、すーっと涙が出ました。
そして、横を向くと朝焼けの富士。笠雲つき。
雲海も赤い。
もう、ダメです。ごめんなさい。このあたりから涙が止まらないのです。
私は確かに、この光景に「明日」を感じたのです。
ここからは、何に後ろ髪を引かれても、前に進むしかない、全部背負って明日に行くしかない、それ以外に選択肢はない。そう思わざるを得ない風景。こんなに揺るがないものがある限り、過去にとらわれることは無意味だ。
ねえ 何が見たくて 全てを欲しがってきたんだっけ
意味などなくて ただそれだけでいいんだよなあ?
どうして涙流してる?
ひとりじゃまるで見えないのが 日常で
相変わらず頭の中はOur Songしか流れません。振り返るのも、前に進むのも、ひとりじゃどうしていいかわからないから、意味などなくても、山に登るのかも知れません。
ひとしきり泣いたあとは、下山!ここから檜洞丸を経由して、西丹沢ビジターセンターまで帰ります。
昨日とは打って変わって、大快晴!大勝利です。
ずっと富士が見守ってくれています。
檜洞丸前でシャリバテし、予定外の昼食を。再びラーメンでした。そこから一気に下山。昼食をはさみましたが概ね予定通りの時間に西丹沢ビジターセンター到着。安心。
西丹沢ビジターセンター~新松田駅までのバスではもちろん、Our Songを聴いていました。ありがとうGRAPEVINE。おかげでがんばれました。
新松田から小田急線で自宅最寄りに着き、一目散に近くの焼肉屋へ。体が肉不足じゃ〜!!!!
三頭山に登った仲間おすすめの店です。ちなみに28歳を超えてからひとり焼肉に何も感じなくなりました。名物ホルモンぷりぷり!安いしまた行く。
すれ違う登山者は、何を考えながら登っているのだろう。
私は、たいてい過去のことを思い出しています。あのとき言ってしまったひどい言葉や、底なしに笑った友達との会話。思い出したくないことまで頭をよぎって座り込みたくなることもあります。
でもやっぱり前に進むしか、明日を待つしかない。ただし、全部背負って。立ち止まってもいいけど、きっと生きているだけですでに退路を絶たれているのです。
丹沢には、とびきり美しい「明日」がありました。日の出とともに赤く焼ける富士と雲海、足元には輝く樹氷。たまには(特に日曜の夜)いやになる「明日」、少し好きになれるかも知れません。
きっと明日は筋肉痛。うん、これも背負うべき昨日。
明日もがんばろう。